ストレスというと、何か身体に悪そう、、、というイメージってありますよね?でも、ストレスが身体にどう作用して、どのような病気につながるか、ちゃんとわかっていますか?
ここでは、ストレスが身体を病気にするメカニズムについて見てみましょう。
ストレスが原因でかかる病気
ストレスでうつになりやすい性格とは?ストレスは心だけでなく、臓器にも病気をもたらす!
うつ病など、精神的な病気の原因の多くがストレスであるのは、感覚的に分かりやすいと思います。しかし、ストレスは、その様々な影響を通じて、臓器自体に病気をもたらすこともあります。
例えば、呼吸器系の疾患。息が苦しくなる、いわゆる過呼吸の原因は、主にストレスと考えられています。また、ストレスを感じると胃腸が痛くなるように、胃潰瘍、十二指腸潰瘍にとってストレスは大敵です。
突発的な下痢などを伴う、過敏性腸症候群も、ストレスによるものです。
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そして、ストレスを感じると胸がドキドキするように、心臓への影響も無視できません。酷い場合は、キラーストレスまでエスカレートしてしまい、虚血性心疾患や、心筋梗塞など、命に関わる症状となります。
では、ストレスを感じて様々な病気の症状が出るとき、身体の中ではどのようなことが起こっているのでしょうか。
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ストレスは自律神経に影響を及ぼす
自律神経というのは、自分の意思に関わらず、脳の指令を受けて臓器などを動かす神経のことです。例えば心臓は、自分で「動け」と念じなくても動いていますよね(そうじゃなかったら、寝てるときに心臓は止まってしまいます!)。
ストレスは、この自律神経に影響を及ぼします。
ストレスは交感神経の動きを促進する
自律神経は、いろいろな動きを促進させる交感神経(≒アクセル)と、動きにブレーキをかけて穏やかな状態に戻そうとする副交感神経(≒ブレーキ)の二つに分かれますが、ストレスは、主に交感神経の動きを促進します。
流れとしては、脳がストレスを感じると、その刺激が交感神経を活発にさせて、副腎に伝わり、アドレナリンが出ます。
アドレナリンは、まさに興奮剤であり、身体中にエネルギーを送ろうと、血流を増やすため、心筋のドキドキ(収縮力強化)などをもたらします。
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もちろん、これは通常の反応であり、それ自体に問題はありません。しかし、その状態が長く、もしくは頻繁に続き、キラーストレス状態になってしまうと、アドレナリンが上手く作用しなくなります。
本来アドレナリンが出るべきときに出なかったり、その逆が生じたりと、自律神経のバランスが崩れてしまいます。
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また、交感神経が優位になると、てっとり早く体内のたんぱく質をエネルギー化しようと、胃粘膜の細胞などが使われることがあります。これが度重なれば、当然胃壁が薄くなるので、胃酸で荒れやすくなるわけです。
このように、ストレスから自律神経のバランスが崩れ、心疾患や胃潰瘍に至ってしまうことが、実際に起こり得るのです。
免疫系への影響
病原体などから身を守ってくれる免疫系。過度なストレスは、この免疫系にも打撃を与えます。
ストレスが過剰になると善玉菌もなくなってしまう
ストレスを受けて交感神経が活発になり、アドレナリンが出ると、血液の中の白血球、さらにその中でも、実際に細菌などを食い殺してしまう働き(顆粒球 かりゅうきゅう)が促進されます。
ストレスを受け続け、アドレナリンが過度に出る状態になると、顆粒球も必要以上に活発になってしまい、体内の役に立つ菌まで食い殺してしまいます。
さらに、顆粒球が死んで活動を停止すると活性酸素を生み出すことから、顆粒球の過剰になることで、活性酸素で体内の組織を傷つけることになります。
コルチゾールも分泌される
そして、ストレスによって体内に出回るのはアドレナリンだけではありません。ストレス状況に耐えるため、コルチゾールという物質もまた、分泌されます。
コルチゾールにも様々な機能がありますが、その一つとして、免疫を抑える機能があり、具体的にはリンパ球の一つであるNK細胞の働きを抑制します。
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アドレナリンやコルチゾールは、身体をストレスから守るために重要な役割を果たすのですが、継続するストレスや、キラーストレスなどの強いストレスを受けると、分泌のバランスが崩れ、免疫力を低下させることになるのです。
免疫力の低下は、風邪やインフルエンザといった感染症にかかるリスクを高めます。深刻な場合は、がん細胞の増殖を促すことにもつながりかねないのです。
ストレスでかかる病気の具体例
ストレスは、自律神経や免疫系に影響し、様々な病気の要因になります。具体的には、以下のような病気に関係が深いと考えられています。
呼吸器系の病気
過呼吸(過換気)症候群
呼吸の回数が増えすぎて、息が苦しくなったり、手が震えたり、重大な場合は失神してしまう過呼吸症候群。その主な原因も、ストレスと考えられています。
ストレスによって脳の呼吸中枢が刺激されると、必要以上に早いスパンでの呼吸(特に息を吸うこと)が繰り返されるため、血液の中の酸素濃度が過剰に高まり、その反面として、必要なだけの二酸化炭素の濃度を下回ってしまいます。その結果、血液のアルカリ値が高くなり、様々な症状をもたらすわけです。
過呼吸の症状に対しては、呼吸によって必要分の二酸化炭素が逃げていかないようにすることが大切です。そのため、慌てず、ゆっくりと呼吸することを意識しましょう。また、周囲の落ち着いた対応も重要です。
なお、紙袋などで口を覆い、二酸化炭素が多い吐いた息を吸い込む方法(ペーパーバッグ法)がかつて有効と考えられてきましたが、窒息の危険もあることから、現在では、医師や医療従事者以外は避けた方がよいとされています。
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過敏性腸症候群
通勤・通学の途中や、大事な会議・試験の前などにお腹が痛くなり、下痢などで、トイレに駆け込んでしまう過敏性腸症候群。大腸がんや潰瘍性大腸炎と異なり、血液検査や内視鏡検査でも原因がわからないその病気の背後には、ストレスがあります。
意識する・しないに関わらず、身体や心がストレスを感じると、自律神経などの働きにより、腸のぜんどう運動(腸が収縮したり弛緩したりして、便を運ぶ運動)へ何らかの影響が見られます。超過敏性症候群は、その影響が特に大きいケースです。
このとき、腸の内部ではセロトニンという物質が分泌されており、これが腸内のセロトニン受容体とくっつくことで、腸のぜんどう運動が異常をきたし、下痢などの症状が出るわけです。
過敏性腸症候群に対しては、脂っこいものや香辛料を避ける食事療法や、腸の動きを整え、ストレスを解消するための運動療法に加え、腸内でのセロトニンの作用を抑える薬物療法などがあります。
胃潰瘍
ストレスを感じると胃が痛くなる、そんな状況が続くと、胃潰瘍にかかってしまうことがあります。そもそも潰瘍とは、皮膚や粘膜が深く傷ついて、えぐれたりただれたりしてしまうこと。その程度によっては、皮膚や粘膜に穴が開いてしまうことだってあるのです!
原因としては、ピロリ菌の出す毒素や、非ステロイド系鎮痛薬の使用などによる、胃粘膜への攻撃因子の増加が挙げられていますが、やはりストレスの影響も無視できません。
ストレスによって自律神経のうちの交感神経が活発になると、胃酸の分泌も活発になります。胃酸は強力な酸性の液体なので、胃粘膜を傷つけてしまうことになります。
また、ストレスで内蔵の神経が緊張し、胃への血流が悪くなることで、胃粘膜の再生が遅れ、胃が傷つきやすくなってしまうこともあります。加えて、アドレナリンの分泌によって体内のエネルギーを消費する際に、胃粘膜のたんぱく質が分解されることがあり、このことも、胃が傷つく要因になります。やはりストレスは胃潰瘍の大敵です。
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心筋梗塞
心臓を取り巻く冠動脈。その血流障害が続き、心臓の筋肉細胞が壊死してしまう、恐ろしい病気が、心筋梗塞です。
緊張したり、怒ったりしてストレスを感じた際、交感神経の動きが活発になることに加え、副腎皮質からは様々なホルモンが分泌されます。
ホルモンのうち、アドレナリンとノルアドレナリンは、ポンプのような心臓の働きにさらにアクセルをかけ、負荷を強くかけることになります。加えて、それらのホルモンの働きなどにより、出血したときなどに止血の役割を果たす、血液中の血小板の濃度が上がり、流れにくいドロドロとした血液になります。
このように、ストレスによって心臓の負荷が高まる一方で、ドロドロとした血液になるため、血圧が上昇し、心筋梗塞のリスクが高まることになるわけです。もちろん、心筋梗塞のリスクを高めるのは、ストレスだけでなく、食事や運動などの生活習慣という要因もあります。
ただ、規則正しい食事や運動はストレス解消にも効果があるとされており、常日頃からストレス解消を意識すれば、心筋梗塞のリスクを下げることができるでしょう。
「ストレスが病気をもたらすメカニズム」のまとめ
- ストレスは、精神的な病気はもちろん、胃潰瘍や心疾患など、身体の病気の原因となりえます。
- ストレスが原因となる病気の大きな原因は、自律神経のバランスが崩れることです。
- 自律神経のバランスが崩れることで、アドレナリンなどが適切に流れなかったり、免疫力が弱ったりするため、病気にかかりやすくなります。