急に強く怒られたり、慣れない大舞台でのプレゼンをしたりするとき、緊張してテンパったり、頭が真っ白になってしまいますよね?そのような現象、実は、ストレスが脳に作用して起こると考えられています。
では、ストレスを感じたとき、脳はいったいどのように働いているのでしょうか。また、ストレスを与え続けると、脳にどのような影響があるのでしょうか。そして、脳へのストレスを緩和させる方法は無いのでしょうか。そこで今回は、ストレスが脳に及ぼす影響について解説します。
ストレスによって、脳が感情や衝動を抑えきれなくなる!?
ストレスを感じると、普段は抑え込まれている感情(怒り、悲しみ、不安など)が表に出たり、いつもは我慢できるはずの衝動(暴飲暴食や浪費など)が抑えられなくなったりすることがあります。それは、ストレスが、感情や衝動を抑制している脳の機能を弱めてしまうからです。
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脳にストレスがかかると、脳の内部全体に張り巡らされている神経細胞から、ノルアドレナリンやドーパミンなど、神経伝達物質が放たれます。これらの物質が、感情などをコントロールする役割を果たす脳の前頭前野でたまってくると、神経細胞間のネットワークが弱まります。
ネットワークが弱まると、当然、行動をコントロールする能力も低下することに。こうして、普段抑えている感情や衝動が表に出てしまうのです。
もっとも、脳神経のネットワーク機能が低下することも、人類の進化の過程で得られた特質であり、何らかの積極的な意味があるものと考えられています。ネットワーク機能の低下によって脳の複雑な制御機能が落ちるということは、それだけ原始的な衝動で動くということ。
おそらく、遠い昔、外敵など、危機に遭遇した人類は、自己の感情や衝動をコントロールすることよりも、一瞬の本能的判断で立ち止まったり反射的に動いたりすることで生き残ってきたと考えられます。脳とストレスの関係では、人類の生存本能と現代社会の齟齬も、課題なのかもしれません。
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コルチゾールによって脳にダメージ
ストレスを受け続けると、脳による感情や衝動のコントロールが弱まるだけでなく、脳そのものにダメージが与えられます。具体的には、脳の中でも記憶などを司る海馬という領域です。
ストレスを感じると、脳から体に指令が出され、副腎などから様々なホルモンが分泌されます。それらの中で脳に影響を与えるのが、コルチゾールというホルモン。コルチゾールは血液を経由して脳にたどり着き、そこで吸収されますが、その量が一定を超えると、脳にダメージを与えることがわかっています。
ストレスとホルモンの関係うつ病発症の要因にも
アリゾナ州立大学の研究によれば、ネズミを金網に長期間閉じ込めストレスを与えると、コルチゾールが原因となって脳の海馬に変化があらわれ、海馬の神経細胞が蝕まれ、破壊されたという結果が報告されています。こうした海馬の損傷は、うつ病を発症させる要因の一つとも考えられ、身体のストレスへの耐性を弱めるとともに、ストレスを通じ、身体の機能自体を損ねることにつながります。弱ったココロとカラダにストレスが蓄積されれば、心疾患や脳梗塞を引き起こす、命に関わるキラーストレスになり兼ねないのです!
重要なのは、知ることと経験すること。ストレスに負けない脳のために
ストレスは脳に様々な影響を与え、時には深刻な結果をもたらしますが、実際、個人としてどうすればよいでしょうか?まず、ストレスをためすぎないよう、気分転換などでこまめに解消を図っていくことは、もちろん大切です。その上で、脳自体を、ストレスに強いものに変えていくこともできると考えられています。
軽めのストレスを少しずつ経験することで耐性UP
動物実験によれば、軽めのストレスに直面して何度も乗り越えた経験がある固体は、一般的に、より大きなストレスへの対処能力にも優れるようになるとされています。その意味では、自分にとってのストレス要因をよく知り、一つ一つ対処していくことが、脳をはじめとしたストレス対処能力を高めることにつながるでしょう。
また、例えば人前で話すことにストレスを感じる場合は、練習という軽めのストレス経験を積むことも役立つはずです。
過度のストレスが恐ろしいことはもちろんですが、人間には、それに対応する知恵や力も備わっているといえるでしょう。恐れるだけでなく、ストレスに負けない強さも身につけていきたいですね!
まとめ
- 脳がストレスの影響を受けると、まず、神経ネットワークの機能が低下し、感情や衝動をコントロールする能力が低下することになります。
- 脳へのストレスを放置すると、脳の一部で記憶などを司る海馬が破壊されたり、うつ病やキラーストレスで心身への深刻な影響がもたらされたりすることがあります。
- ストレスに対処するため、こまめにストレスを解消するとともに、軽めのストレス経験に対処することで、ストレスに負けない強さを身に付けることもできます。