ここでは、ストレスが起因してうつ病になってしまう仕組みはどのようになっているのかについて、ご説明していきます。
ストレス由来のうつ病のメカニズムについて知っておこう
ストレスのせいでうつ病に至るメカニズムは、いまだ明確にされていません。しかし一つの仮説として、「視床下部-下垂体-副腎皮質系仮説」があります。
- 脳の視床下部
- 脳の下垂体、
- 腎臓の上にある副腎
この仮説は上記3つ互いに深く関係し合っていると言われております。
私たちがストレスを受けると、まずは脳の視床下部からホルモンが分泌され、それが脳内の下垂体を刺激します。刺激された下垂体からもホルモンが出て、今度は副腎を刺激していきます。
そして刺激された副腎はコルチゾール、ノルアドレナリンなど色々なホルモンを分泌していき、これらが私たちの身体に様々な症状として現れるという説です。
ストレスホルモンであるコルチゾールの働き
コルチゾールは「ストレスホルモン」と呼ばれていて、血糖値や血圧を上昇させたり、免疫力を低下させたりする働きがあります。適度なストレスが加わるとコルチゾールは私たちにとって良い刺激となり、元気が湧いたり頑張れたりします。
血糖値が上がれば脳に栄養分も行き渡りますし、血圧が上昇すれば全身へ酸素が送り込まれます。ただしストレス過多になってしまうと、コルチゾールの分泌量も過剰になり、糖尿病や高血圧症になったり、免疫力が著しく下がる事で感染症にかかりやすくなったりします。
ストレスでうつ病が発症してしまうのは、過剰なストレスによって副腎や下垂体、視床下部の機能が破壊される事だと考えられます。
そしてストレスホルモンであるコルチゾールが大量に出てしまうと、海馬神経毒性も発生するという仮説もあります。これは仮説に過ぎませんが、ストレスによるうつ病の発生原因の一つと言えるでしょう。
うつ病は脳の病!?
うつ病は脳の病気とも言われています。気持ちの問題ではなく、脳が変化しているために発生する精神的疾患という解釈です。
人間の脳はとても多くの脳細胞からできています。脳内で、細胞から細胞へと、神経伝達物質が指令を出し、情報を伝えられていくという仕組みになっています。
うつ病は脳内の神経伝達物質が不足する事によって引き起こされるので、神経伝達物質が減ってしまうと、情報量も格段に減ってしまい、私たちの感情表現や行動がスムーズにいかなくなります。そのために様々な症状が出てきてしまうのです。
うつ病の発病の科学的なメカニズム
人間の脳は、歩く・食べる・呼吸する、など、生活上当たり前の動作を身体に命令してこのような行動を円滑にとる事ができています。また、脳は私たちの身体だけでなく、精神に対しても指令を出していて、やる気・食欲などのような欲求も、脳が指令を出しているから感じるのです。
脳から身体や心に出される命令は、神経伝達物質やホルモンが取り持ってくれています。
この神経伝達物質の中でも、特にうつ病と関係が深いのは「セロトニン」「ノルアドレナリン」の2つの物質です。脳内の神経細胞からセロトニンやノルアドレナリンが放出されると、それを受容体が受け取り、私たちにはモチベーションや欲求がわきあがってくるのです。
- ノルアドレナリン…神経を興奮させる物質で、不安や恐怖、集中力、記憶を働かせます。不足すると記憶障害になったり、何事も全て億劫になってきたりします。
- セロトニン…気分を興奮させます。体温コントロール、運動、食欲、睡眠、安心感などに影響する物質です。 不足すると体温調節が困難になり、運動機能低下、食欲不振、不眠、不安などの症状が出ます。
何らかの原因で神経細胞からの放出量が減少してしまうと、脳内のセロトニンやノルアドレナリンも低下し、受容体が受け取る事ができなくなってしまいます。
これによって活力が低下したり、欲求が失われたりするのです。
うつ病になると身体や心境にいつもと違う色々な変化が生じるのは、このためでもあったのです。脳内神経伝達物質のバランスが乱れる事が、うつ病発症のメカニズムという事ですね。
このように考えると、うつ病は心の病気というより脳の機能障害という方が正確かもしれません。「心が風邪をひいた」と表現することもあります。
うつ病の治療方法は?
うつ病の治療は決して簡単ではありません。現在は薬剤を使った治療が一般的です。
薬を飲み続ける事が大切
うつ病には何もやる気が起きなくなったり、気分がふさぎ込んだりといった症状がありますが、薬を飲み続ける事で、これらの症状を改善する事ができます。ご家族の方など、大切な人に支えてもらいながら焦らず治療していく事で、早期にうつ病を解消していく事ができます。
うつ病患者さんは、不眠を訴える人が圧倒的に多いです。医者は的確に診断を行った上で、患者さんに合ったお薬を処方してくれます。薬剤治療も焦らずゆっくり取り組む事が大切です。
治療期間を短くするためにも、再発防止のためにも、患者さんは処方された薬を飲み続ける事が大切です。途中で勝手に飲むのをやめてしまわないようにしましょう。自己判断によるお薬停止はとても危険です。
うつ病の治療期間はどれくらい?
うつ病は大体3カ月~半年で回復するケースが多いです。長期間かかる場合でも、1~2年で改善していくでしょう。ただし再発リスクも高いので、いったんうつ症状が治ったと思っても、何かをきっかけにまた発症してしまう恐れもあります。
お医者さんから「治療は終了です。」と言われるまではちゃんと言われた分量の薬を飲み続け、自分の判断で服用停止したり、飲む回数や個数を減らしたりすることは避けましょう。
まとめ
- ストレスが原因によるうつ症発病のメカニズムは正確に解明されていないのが現状です。
- うつは脳の病気とも言われており、脳の視床下部や下垂体が関係しあっているのではないかと考えられております。
- 薬剤投与が一般的な治療方法ではありますが、個々人に相応しい治療法が望ましいです。