カギは胃粘膜と胃酸。ストレスで胃が痛くなる理由
胃腸や心臓など、手や足のように自分の意思で動かすことができない内臓の働きは、自律神経によってコントロールされています。ストレスを感じると、自律神経のうち交感神経の働きが活発になり、アドレナリンなどの物質が体内に分泌されることに。興奮剤としても知られるアドレナリンは、心臓の鼓動を速めるなど、身体の隅々にエネルギーを行きわたらせるよう、臓器の動きを活発にします。
過度のストレスを受けると、胃自体が収縮することに加え、本来必要としない時にも、アドレナリンによって臓器が活発に動いてしまいます。
アドレナリンはエネルギーをもたらすよう、体内のたんぱく質をてっとり早くエネルギーに変えようとするため、胃粘膜など、比較的弱い内臓細胞のたんぱく質が分解されることがあります。それによって胃壁が薄くなり、胃が傷つきやすい状態になってしまいます。
胃の働きも活発化することから、胃酸の分泌が増えることに。言うまでも無く、胃酸は強力な酸性の消化液であり、弱った胃壁にダメージを与えてしまいます。このように、過度のストレスによって、胃の粘膜が傷つきやすくなる一方で胃酸の分泌が増えることから、胃酸によって胃が傷つけられてしまうことで、胃が痛くなってしまうのです!
動悸が止まらない?最近ストレスを感じている方はうつ病の可能性押さえておこう!ストレスだけじゃない胃痛の原因
もっとも、胃が痛いからといって、ストレスだけが原因とは限りません。例えば、胃酸の中でも生きていける細菌、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)です。
ピロリ菌は、胃粘膜を損傷する毒素を出すことから、胃痛だけでなく、十二指腸潰瘍や逆流性食道炎など、消化器系の病気の大きな原因になる他、胃がんなど、症状を悪化させる原因にもなっていると考えられています。
また、痛み止めや解熱剤および炎症を抑える薬として用いられる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)も、消化器の粘膜を弱めることで胃腸炎を発症させるリスクを高め、胃痛の原因となりえます。NSAIDsというと、馴染みの薄い物質のように考えられがちです。
しかし、アスピリン、インドメタシン、イブプロフェンなど、NSAIDsに分類される様々な物質は、市販の風邪薬などにも含まれていることが少なくありません。アメリカでは、NSAIDsを処方された患者の40%以上が、処方が必要ではなかったという研究結果もあります。胃が痛いときには、できるだけ服用を避けた方がよいでしょう。
もちろん、何か単一の原因で胃痛が発生することよりも、ストレスをはじめ様々な要因が重なり合って胃が痛くなることの方が一般的であり、原因を突き止めるのが難しい場合がほとんどです。胃痛がなかなか治らないときは、専門医に相談して、主な原因に対応した治療を受けるようにしましょう。
適切な治療とストレス解消。胃痛の対策について
胃痛、特に症状が重く続いている場合には、原因に応じた治療を受けなければならないでしょう。例えば、ピロリ菌が主な原因ならその除菌が最優先となるでしょうし、NSAIDsを服用している場合は、その量を少なくしたり、服用を中断したりすることも必要になります。
もっとも、そこまで症状が重くない一時的な場合は、対処療法で症状を抑えるだけで十分というときもあるでしょう。お腹を温めて血行をよくしたり、ホットミルクなど温かくて胃の粘膜を保護するような飲み物を飲んだり、しばらく消化に悪いものを避け、消化に良いものを食べたりすることで、症状が和らぐことがあります。
そして、ストレス解消は、短期的にも長期的にも、間違いなく胃痛に有効です。ストレスを緩和して自律神経の調子が戻れば、胃粘膜の損傷や胃酸の過剰な分泌を抑えることができます。また、ストレスを解消するために、十分な睡眠やバランスの取れた栄養を摂ることで、胃痛の症状を抑えるだけでなく、ストレスに強い、胃痛に負けないココロとカラダを作ることができるでしょう。
胃痛は、ストレスをはじめ、カラダやココロのSOSなのかもしれません。我慢しないで耳を傾け、健康な暮らしを取り戻したいですね!
さまざまなストレス解消法をご紹介!まとめ
- ストレスを感じて交感神経が活発化すると、胃が収縮し、胃の粘膜が弱まって傷つきやすくなることに加え、胃酸の分泌が増えることから、胃が痛くなります。
- 胃が痛くなる原因としては、ストレスの他、ピロリ菌や非ステロイド性抗炎症薬などが考えられます。原因に応じた対応が必要です。
- 胃痛の症状が続く場合には専門医により治療が必要ですが、ストレス解消を通じて胃痛に負けないココロとカラダを作ることが、長期的には有効です。